繊維・服飾産業を基盤として近代都市へと成長した大邱の特性を活かし、私たちの暮らしの中で多くの部分を占める衣服の歴史について、古代から近代に至るまでの様々な資料を通して紹介する展示室です。「韓服」をキーワードに、伝統的な帽子類・履物・礼服・刺繍など長い歴史の中で受け継がれてきた韓国の伝統衣装の多彩な美しさに触れることができます。
第1部「韓服、過去と現在、未来」では、チョゴリ(上衣)とチマ(スカート)、履物、玉、耳飾り、刺繍など古来より受け継がれている韓国の伝統衣装の多彩な美しさに触れることができます。ファロッ(王女の大礼服、花嫁の婚礼服)の刺繍の文様に、水が流れたり花が咲いたりする自然の音を重ねた映像「ファロッ散策」は、視覚と聴覚で楽しむだけでなく、韓服の美しさを立体的に感じていただけるでしょう。
第2部「韓服、頭からつま先まで」では、髪飾りや腰帯、礼服、カッをはじめとする様々な帽子を展示するほか、1940~80年代に流行した韓服のスタイルや洋服の特徴を取り入れた韓服などについても紹介しています。韓服の様々なデザインをご覧いただき、韓国人のアイデンティティの象徴である韓服の意味を考えてみていただければ幸いです。
第3部「文様、時代の美しさ」はテーマ展示として行われるもので、伝統織物と文様について考察します。今回のテーマは「織金織物を探る」で、龍仁(ヨンイン)霊徳洞(ヨンドクドン)出土の織金チョゴリの復元品が初公開されます。この織金チョゴリは、2005年に京畿道龍仁市霊徳洞の宅地開発地区にあった朝鮮時代の無縁墓から出土しました。この墓で発見された服飾類は52点で、そのうち織金チョゴリは、金糸で文様を表現した織物で作られています。16世紀初頭の織物や文様、チョゴリなど当時の衣生活文化を知ることができる重要な資料です。
最後に、第4部「朝鮮時代のカーペット, 毛毯」をご紹介します。毛毯は毛糸と綿糸を編んで作った朝鮮時代のカーペットです。三国時代から朝鮮時代にかけて㲮㲪・氍毹・罽毯・毛氈・彩毯・画毯など様々な種類の毛織物が作られましたが、毛毯に関する資料はほとんど残っておらず、毛毯という言葉が耳慣れないのはそのためです。当館では今後、多様な伝統織物や文様を紹介していく予定です。
黒笠は朝鮮時代の代表的なカッ(笠子帽)で、時代によって高さや大きさが変化した。16~17世紀から次第に大きくなり、18世紀に入ると高さと幅が巨大化したために門をくぐるときに邪魔になるほどだった。しかし、1884年(高宗21)に施行された衣服改革以降、カッの大きさが小さくなった。 白笠は喪服を着るときに着用するカッである。基本的な構成や形状は黒笠と同じだが、竹や馬毛で形づくった後に白い布でそれを包んで仕上げてあった。
朝鮮時代の髪飾りで、女性が礼服を着てクンモリ(大きいかつら)を使用する際に前面中央と左右に挿した。
貫子(クァンジャ)は網巾(マンゴン)の左右につけてひもを通すための小さな輪である。実用的な機能を持つだけでなく、材料や文様の違いによって社会的身分を表した。
サギの形をした玉(ぎょく)製の飾りで、カッのてっぺんにつける。
表地がヤンダン(高級絹織物)、裏地が綿入れの冬用チョゴリ。ヤンダンは1900年代初めにヨーロッパから輸入された絹織物に由来する。絹織物はほのかに浮かび上がる文様と柔らかな光沢が特徴で、高級生地として好まれた。
表地は花柄の絹織物で、裏地には洋装用の生地を使った袷のチョゴリ。コルム(結び紐)がなく、ブローチで留めるようになっている。
ファロッはもともと朝鮮時代の王女や上流階級の女性が婚礼の際に着る礼服だったが、次第に庶民の婚礼服としても認められるようになった。ファロッの前と後ろには、長寿や幸せ、多産を意味する波・岩・牡丹・蝶などの文様の刺繍が施された。
朝鮮時代に女性がチョゴリの上に羽織った礼服で、王室の女性たちが様々な儀式や節日に着用した。尚宮(サングン、女官の称号のひとつ)や両班(ヤンバン)家の女性は王室とは異なる材料や装飾のものを着た。
中央の大きな鶴を中心に、4羽の小さな鶴、鳳凰、小鳥、花が細やかに表現され、四隅には雲とコウモリの文様があしらわれている。上下の縞模様と鶴は糸で織り出されており、その他の文様は筆で描かれている。
この毛毯は鳳凰と牡丹が上下左右対称に配されており、上と下の縞模様の部分に菱形が組み込まれている。鳳凰と牡丹が対称になるように面を分割してあり、その均整のとれた比率が落ち着きと安定感を与えている。
袖を除くチョゴリ全体に織金で文様があらわされている。文様が華やかで、両サイドにスリットが入っていることから、礼服として着用されたチョゴリとみられる。織金で表現された文様は、2羽の鳥が首を交差させて翼を広げた姿が上下に配置されたもので、その周りを雲が囲んでいる。
清衍郡主の唐衣。袷の唐衣2着を重ねて一部だけを縫い、4枚重ねのようにしてある。両肩と袖、衽(おくみ)に織金で文様があらわされている。表地には「寿」「福」の文字や、ザクロ、花、宝紋が配されている。